三刀屋の和紙 - The WASHI of MITOYA

二週間前私は、再び井谷さんという製紙業者を探すために三刀屋を訪れました。以前にも述べましたが、井谷さんの作る型染め用の紙は大変質の良いことで知られています。昔の姿をそのままを残す集落に暮らす彼の家を見付けるのは容易ではありませんでしたが、何とか我々一行は辿り着くことが出来ました。井谷家は代々製紙業を営んでおり、現在の岩夫さんは五代目、息子の伸次さんは六代目です。こうした光景に出くわすと、もしやこの世には永遠というものが存在するのではないか、という思いに囚われます。

家に代々続く芸を絶やすこと無く継承している人達に出会うと、尊敬の念を抱かずにはいられません。井谷さんご夫妻は我々にお茶を出し、名人芸と呼ぶにふさわしい型染めの数々を見せて下さいました。その絵を見ることが出来ただけでも出掛けた甲斐があったと思います。気さくで誠実な井谷さんご夫妻に出会えたことも楽しい思い出です。

質の良い紙を見付けるために三刀屋を訪れた旨を伝えたところ、井谷さんは懸命になって協力して下さいました。私の中で井谷さんに対する称賛の念は高まる一方です。積んである紙の山があまりに高く、私がそれに手を触れることさえ出来ないでいると、井谷さん直々に紙の山を動かし、私に最も適した紙を選んで下さいました。

二日間で合計八枚の紙を使わせて頂きましたが、一枚として水洗いして破れたり溶けたりしたものはありませんでした。和紙とは実に強いものです。コウゾの繊維を使って作る井谷さんの和紙は大変使いやすく、色も自然で美しいため、今後もずっと贔屓にして行こうと思っています。皆さんも出かけてみませんか。とても素敵ですよ。