伝説、神話の中の呼称 - Titles in Myths and Legends

神、兄弟、姉妹といった、古い物語や伝説、および神話に用いられる呼称が真に意味するところは、私たちの望むものとは一致しないことがしばしばあります。

それらは当時の文化的背景と関連しているに相違ありません。「神」一つとっても、共同体の中において肉体的、または精神的に抜きん出た力を持つ人物を指すこともあります。日本では、神という言葉はさまざまな意味を持っているのです。 文字通り神を指すこともあれば、精神や人物にも用います。さらに、大切なものなら何でも神と呼びます。

しかしながら、現在われわれが重要と見なしているものは、古代の日本人が大切であると考えたであろうものとは異なっています。それゆえ、神という言葉をすべてのものに結びつけるのは、われわれにとって容易ならざることであり、私たちにできるのは心の中でその意味を見つけられるよう努めることだけです。結局のところ、それこそが言葉の持つかけがえのない価値と意味なのです。

こうした言葉の昔の物語における使われ方から、私たちは「神」という言葉が西欧言語における「ゴッド」とはかなり異なることを理解することができます。 「父」という言葉には、父親という意味もあれば部族の長、義理の父親、または年長者をも意味しますし、「兄弟」という言葉には、男性の親類、同じ部族に属する男性、また「氏」や「殿」といった敬称の意味も含まれます。同様のことは「姉妹」についても言えます。古代の伝説の中では、この言葉は単に「女性」を意味します。が、中には「妻」を指すのに用いたり、実の姉や妹を意味することもしばしばあります。

上に記したような、敬称に用いる用法から、こうした言葉が初期の出雲の国の人々のようなきわめて簡素な農耕社会、漁村、およびそのほかの平和的な共同体から生まれたものであると信じることができます。

今日このような共同体は、上記のような、人々が実際に暮らす村や町といった孤立した地域の中に存在しています。実際のところ、そのような地域社会を見つけるのは不可能かもしれません。テレビやラジオはどこにでもあり、そうした媒体が、自然で純粋でそして親切で寛大な心に代わりさらに人々を無口で保守的にしてしまったのです。