塩見縄手 その三(明々庵) - Shiomi Nawate 3 (MEIMEI AN)

塩見縄手 その三(明々庵)

今回は、松平不昧公の人生と彼の美の世界を旅してみましょう。松江藩七代目藩主であった不昧公は松平家の血を引いています。茶の湯をこよなく愛し、茶道を芸術へ昇華させた不昧公は、その道程において数多くの美しい茶道具や茶室を造りました。

その一つが一七七九年に建てられた明々庵です。ここを訪れ、お茶を味わうことで、皆さんも不昧公が体験した茶の湯の美に触れることが出来ると思います。

実際に明々庵に行って見るととても新しく、建築以来二百年以上も経過している様には見えませんが、これは多くの部分が修復され、庭園もさほど古くないためです。この美しい茶室は、一九六六年、私が二度目に来日した後に現在の場所に移転しました。私達はこの茶室を流れる長い歴史をきちんと認識しなくてはならないと思います。

明々庵は、前回、前々回取り上げた塩見縄手からほどない場所にあります。八雲庵から東に約百メートル行き、左折し坂を上り、約五十メートル行ったところで左手にある、小さいですが大変急な階段を一番上まで昇ります。気が付くと、そこはもう明々庵の庭園の中です。

左手には眼前に松江城の雄姿が迫り、右手には茶室と庭園があります。中へ入ってお手前を頂きながら、不昧公に思いを巡らせて見ませんか。