芸術家と芸術作品 - Artists and Exhibits

偉大な剣士や画家、また職人を生み出した禅の精神も、今では廃れてしまいました。当時の画家は自らを絵筆と一体化し、いったん構想が決まるとそれを無心に描きました。心で作品を描いたのです。すばらしい芸術家の中には、木村義男氏、安達不伝氏、安部栄四郎氏、船木道忠氏、村田勝嘉氏らの友人もいましたが、たいへん残念なことに皆さん既に亡くなられています。気さくで、親切で、魅力的な方たちでした。

著名な画家たちが、10分から15分の間に墨で絵を描くのを見たことがあります。何かに取り付かれたように、あるいはまるで夢の中で筆を動かしているかのような印象を受けました。しかも、できあがった作品は本当にすばらしく、生命感にあふれていました。これこそ、真の芸術というものです。 陶芸家、和紙作家、銀細工師が、同じように仕事をするのを見たことがあります。皆、作業に没頭していました。 ほかの国の芸術家が同じように一心に仕事をしているのも目にしましたが、日本人はこの方法を完全に習得しているように見えます。これこそ、日本美術が全世界で賞賛される理由でしょう。

日本の芸術には「心」があるのです。 たいへん幸運なことに、日本には偉大な芸術家が数多くいます。読者の皆さんは、日本中の市や町にある美術館や展示場で、優れた芸術作品を鑑賞できるという恵まれた環境にあります。 とはいえ、皆さんは、このようなすばらしい展示会を訪れ、日本人がいかに優れた芸術を生み出すかを確かめる時間や労力を惜しまれているようです。これはとても残念なことです。日本の文化について学べるせっかくの機会を、だれもが上手に利用すべきです。私は、ありとあらゆる作品を鑑賞してきた人を、とてもうらやましく思います。