金屋子と鉄の神々 - Kanayago-The Gods of Iron-Workers

金屋子と鉄の神々

先日私は、あるアメリカ人教授のためにたたら製鉄の訪問と金屋子神社参拝の手配をするよう依頼を受けました。お引き受けしたのですが、その際、製鉄の神に関する、2、3の疑問が浮上してきました。一つ目の疑問は、金屋子神社が男神を祭る大社造りの神社であるということです。たたら製鉄の神は女神であるとばかり思っていたのです。そこで、答えを見つけようとさまざまな文献を当たってみました。

現在、金屋子神社の本殿は広瀬町西比田にあり、毎年4月21日には祈年祭が催されます。この神社には、金山彦という男神と金山姫という女神の二人の神が祭られています。もちろん、神社の「千木」は、金山彦に献上されましたが、主に崇拝されるていのは金山姫です。シャーマニズムに照らし、金山姫は不浄な女性をたいへん嫌っているとされ、こうした女性が神社に足を踏み入れることを許しません。しかし、死については容認するというのです。死を不浄なものと見なす宗教において、これは奇妙なことです。

なぜでしょう。 その理由はおそらく、古いたたら製鉄の炉が屋外の屋根もないような場所にあったことに関係していると思われます。雨の多い山陰地方では、雨水のせいで製鉄中の炉が爆発ことがときおりあり、命を落とした人もいました。しかしそれは製鉄という、金山姫に奉仕するための行為の中での出来事であったため、女神は死に対して寛容であったのだと思われます。

こうした神々や女神たちは、たたら職人の守護神なのです。「金屋子」とはたたら職人のことです。金屋子神社の起源は、日常のすべてのものに神が宿っていた太古の時代にまでさかのぼります。神々は兵庫県の播磨の国に降臨し、さぎに乗って中国山地に渡ったとされています。この地の二人の領主によって祭られた神々は、人々に厚く崇拝されてきましたが、たたら製鉄の衰退とともに彼らを信仰する人の数もまた減少しています。

製鉄の技術がここ出雲地方に伝来したのは、この地方の地下に眠るたいへん豊富な砂鉄によるものと思われます。その質は高く、世界にその名を知られる日本刀に使用されています。さらに、日立製鉄所でもジレット社(米国のかみそり、化粧用品、筆記具製造会社)のための鉄の製造に用いられています。

さらに、もう一つ気付いたことがあります。ある鉄の神は、二つまたは三つ頭を持っているのです。これを見たときは本当に驚きました。これまで私が読んだ日本の神話の本には、複数の頭を持った神など出てこなかったのです。金山彦と金山姫のことなら記録に残っています。安来の日立和鋼博物館に収蔵されているたいへん古い何冊かの書物に、二人に関する記述が見られます。これらの書物には、二人の絵もありましたが、異国からやってきた神のように見受けました。事実、そのとおりなのです。

インドには、複数の手や頭を持った多くの神々、想像し得るすべての神がいるのです。こうした神々は、製鉄の技術を携え、中国や朝鮮半島を経て日本にやってきたことでしょう。長い時間をかけ調べていくと、日本文化のすべてにその由来を見つけることができます。私はこの調査を、真に満足できるものにするために、もう少し続けようと思っています。