漆器 - Lacquerware

漆器

漆塗りは日本の文化の中でも非常に長い歴史を誇っており、これを上回るのは陶芸くらいです。2000年以上前の縄文時代の遺跡から見つかった漆器から、当初の漆塗りには赤と黒のみが使用されていたことが伺い知れます。

出雲地方には「八雲塗り」と呼ばれる漆器があります。実用向けに作られる八雲塗りは、簡素な模様と色彩を基調としており、私の好きな漆器の一つです。赤、黒、黄色、緑、茶色だけを使用して、職人の手によって描かれた模様はとても自然で美しいものです。しかし、近年は伝統的な本来の八雲塗りを見かけることは少なくなっています。もっと売れるようにと、金粉や銀粉をまぶしたり、ほかの派手な色を用いたものが出回っています。貴重な伝統的遺産を犠牲にし、売ることのみを目当てに生産されたものより、職人の魂が伝わってくる本来の八雲塗りの方が私は好きです。

漆塗りはこの日本で花開きました。漆の彫り物「堆朱(ついしゅ)」に勝る工芸品は、世界中のどこにも存在しないと思います。漆塗りの中で最も人気の高い「蒔絵」は、日本のほかの優れた芸能や文化同様に8世紀までさかのぼります。真珠の母貝のあおがいを模様とし漆をかけたものも、芸術性に溢れています。しかし、私を最も魅了する漆塗りはやはり八雲塗りです。骨董品屋で八雲塗りを見つけると求めずにはいられません。どうですか皆さん、この国の芸術の歴史について興味がわいてきませんか。 私たちは漆塗りというすばらしい芸術についてもっと学び、大切にすべきです。

漆は、革、木、紙、布、金属、陶器などあらゆるものに塗られますが、それは材料を保護するだけではなく、驚くことには接着剤としての役目も持っているのです。破損した陶器を漆を用いて修復する作業は、現在でも熟練した職人の手によって続けられています。今度美術館を訪れるときは、漆塗りの工芸品を探してみてください。きっと驚かれるはずです。