たたら製鉄 - Tatara Iron Making

たたら製鉄

一月二十九日、たたら製鉄を見学しに、横田町を訪れました。たたらには、夜の十時にまず出向き、翌朝の五時に再び訪ねましたが、とても印象的なものでした。そこで働いている方達が私の取材に進んで協力して下さり、質問にも快く答えて下さいました。皆さん、どうもありがとうございました。

焼成中、木炭と砂鉄をほぼ同じ割合で炉の中にゆっくりと慎重に入れて行きます。その総重量は約十トンにも上ります。木炭は非常に軽いものですので、これは大変な量です。二つの製炭業者が一年かけ、今年予定されている四回の焼成に使用する木炭を製造しました。鉄の焼成は冬の間、一回につき一週間の内三日を割いて行われます。通常、木曜日に始まり、土曜日に終わります。

今回最も印象に残ったのは、炎とその色、空気をふいごから炉に送った時に炎が上下にゆらめく光景でした。ふいごから空気が噴出す(一分間十二回)時の音はまるで巨人の呼吸の様に聞こえました。たたら製鉄が神々と結びつけられるのも故無しという気がします。

最後のけら出し(二・五トンの鋳塊を取り出すこと)には大変興奮しました。危険と背中合わせの状況の中で交錯する叫び声、叩きつける音、こする音が、耳に飛び込んで来ました。けらは取り除かれても、依然として炎を上げていました。沢山写真を撮りましたが、幸いうまく写っていました。

炉は一度の焼成が終わる度に取り壊し、また造り直します。他の全ての行程同様、この作業にも膨大な知識を要します。村下(むらげ)の阿部さんと弟子の木原さんはこの知識を兼ね備えた、たたら職人です。阿部さんは九十一歳ですが、未だ現役でいらっしゃいます。古代から伝わる技法をこの目で間近に見ることが出来、大変貴重で有益な経験をさせて頂きました。