お風呂 - O-FURO

お風呂

「きれい好きは敬神に次ぐ美徳」という言葉を古来より実践して来た日本の人々は、清潔好きな国民として知られています。これは、御風呂に入ると病気になり、遂には死んでしまうと考えている英国やヨーロッパの人々とは対照的です。彼らは「御風呂嫌いの国民」として知られ、大量の香水を消費します。

日本の人々は匂いに大変敏感で、ヨーロッパ人の体臭は感知出来ますが、日本人同士だとあまり意識しません。朝鮮人の場合、多少事情が異なります。朝鮮料理は匂いが大変きついため、彼らを遥か遠くからでも察知出来ます。日本料理は殆ど肉を使わないため、匂いがありません。日本の全ての家庭には御風呂があり、人々は毎日欠かさず入浴します。御風呂の無い生活は日本の人々にとって最も耐え難いものです。

入浴は日本人の生活に深く根差した習慣です。人々は、非衛生的で汗の臭う人には近寄りません。 昔は、下から火を起こし底の方から熱くして行く、壷形の風呂が用いられていました。熱くなり過ぎず、適当な温度を保つ為、☆扉☆と☆覆い☆で火を調節しました。この風呂は、幕府の転覆を企てた廉で捕まり、生きたまま釜でゆでられ殺された一人の男の名に因んで「五右衛門風呂」と呼ばれました(当時は罪人を裁く為の多くの制度が存在し、犯罪の増加を防ぐのに一役買っていました)。この話には幾分作り話めいたところがありますが、それでも生きたままゆでられるのは御免被りたいものです。

日本の家庭では、家族全員が同じお湯を使います。父親が最初で母親が最後という風に、入る順番も決まっています。近年では電気、ガス、石油など、御風呂の沸かし方も多岐に渡っています。中には太陽熱を利用するものもあります。日本では太陽熱は多方面で活躍しています。浴槽も以前と比べると洗練されたものが増えて来ました。しかし、私は長年親しんで来た、いつでも熱い湯に入れる五右衛門風呂が好きです。

日本の御風呂に入る際には、絶対に守らなくてはならない作法があり、これに従わないことは日本の家庭で最も無作法な振る舞いとされます。その作法とは次のようなものです。まず、浴槽から湯を汲み体に掛け、湯の熱さに慣れます。次に石鹸で体をきれいになるまで洗います。そして、石鹸を洗い流してから湯船に入ります。 但し、あまり急いで入ると、熱湯の中で殺されそうな感覚に陥ります。お湯の熱さに慣れるため、ゆっくり入って下さい。お湯は人体の温度よりわずか2〜3度高いだけですが、大変熱く感じられます。体を洗ったり、石鹸を洗い流す際は、ぬるま湯を使えば良いのですが、浴槽に浸かる時は、そういう訳に行きません。

少し大仰に言い過ぎましたが、ゆっくり湯船に入る様心がけ、水はあまり大量に使わないで下さい。 石鹸の泡を洗い流さず湯船に浸かったり、お湯をぬるくし過ぎるのは控えなくてはなりません。全員が同じ湯を使う為、後から入る人に不愉快な思いをさせる事になるからです。とは言え、各自、自分が使った分は新たに足したり、あまりにお湯が多く、身を沈めた時に溢れ出たりしますので、お湯はある程度取り換えられる事になります。

お客は通常、御主人の後に入る様もてなされます。皆さんの場合もそうだと思います。 湯船に浸かっていると、直に疲れが癒され、気を付けないと眠ってしまいそうです。熱い湯船の中で体を動かすと、お湯が体の方に打ち寄せて来て火傷をしかねません。お湯は体の周りでは約1度低くなっており、その1度の差があるお陰で浴槽の中に浸かることが出来るのです。 湯船から上がった時、体は真っ赤で気だるく、濡れた麺になった様な気がします。 心臓に疾患がある、または高血圧の方は注意が必要です。入浴するのは構いませんが、長時間湯船に浸かるのは禁物です。過去に亡くなった方が大勢いらっしゃいます。しかし、さほど頻繁に起こる訳ではありません。慣れてしまえば大丈夫です。お試しあれ。

多くの人は、お湯を大変熱いと感じますが、実際の温度は約43度です。しかし、それがわずか1度上がっただけでも、熱く感じ湯船に入れないのです。入浴は、日本に深く根付いた習慣です。火山の多いこの国には温泉が数多く存在します。恐らく御風呂好きという日本人の性癖が失われる事は決してないでしょう。

温泉があれば、旅の楽しさも増します。 日本人の長寿の秘訣は、温泉にあるのかも知れません。もし、日本式の温泉に入る機会があれば、是非お試し下さい。決まりを守り、心臓発作に注意すれば、日常から開放され、忘れられない思い出になること請け合いです。