古代の時間 - Time in the Ancient Way

十干十二支(じっかんじゅうにし)は、女帝推古(593〜628)が604年に始めたといわれていますが、もともとは中国から伝わったものです。ヨーロッパでも知られていましたので、中国の探検家によって中国にもたらされたのかもしれません。古代文化の起源は謎に満ちています。 十干十二支を理解するには、多くの知識が必要です。

その1 – 十干には10の幹があります。幹を表す漢字は、甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)で、それぞれ「音読み」(中国語の日本式の発音)で読みます。「こう」と「き」が二つずつありますが、それぞれ違う漢字です。

それぞれ、次のような意味があります。甲は木の兄、乙は木の弟 丙は火の兄、丁は火の弟 戊は土の兄、己は土の弟 庚は金の兄、辛は金の弟 壬は水の兄、癸は水の弟です。 これらの音と十二支の動物の「音」を組み合わせて、60年を周期とする各年の中国名が決まります。 始めの12年は、甲子(こうし)、乙丑(いちゅう)、丙寅(へいいん)、丁卯(ていぼう)、戊辰(ぼしん)、己巳(きし)、庚午(こうごう)、辛未(しんび)、壬甲(じんしん)、癸酉(きゆう)、甲戊(こうじゅつ)、乙亥(いつがい)です。13年目は、最初の十干の部分はその続きからで、十二支の動物は先頭に戻ります。これが5回繰り返され、61通り目に最初と同じ名前になります。

その2 – 五行は、木、火、土、金、水の五つの要素で成り立っています。これに、陽(兄)と陰(弟)を組み合わせます。十干では、陽(兄)を「え」、陰(弟)を「と」と読んで10要素にします。つまり、木(き)は木兄(甲:きのえ)と木弟(乙:きのと)、火(ひ)は火兄(丙:ひのえ)と火弟(丁:ひのと)、土(つち)は土兄(戊:つちのえ)と土弟(己:つちのと)、金(かね、または、か)は金兄(庚:かのえ)と金弟(辛:かのと)、水(みず)は水兄(壬:みずのえ)と水弟(癸:みずのと)となり、全部で10通りになります。

その3 – 60年の周期には12の枝があります。12の枝とは動物、つまり十二支です。十二支はねずみ、牛、虎、うさぎ、たつ、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、いのししの順です。数えるときは、ある程度縮めて、「ね」、「うし」、「とら」、「う」、「たつ」、「み」、「うま」、「ひつじ」、「さる」、「とり」、「いぬ」、「い」、と言います。 各要素の陰陽(兄弟)の後ろに、その年の動物が組み合わされます。たとえば、日本語で「木の兄のねずみ」つまり「きのえね」が十干十二支の最初の年になります。これを音読みすると、「甲子(こうし、または、かっし)」になります。「子(し)」は中国語でねずみを意味します。「甲(こう)」は「木の兄」の意味です。

その4 – 十二支に、五行の陰陽、さらに動物を組み合わせると、60通りになります。動物のうち、ねずみ、虎、たつ、馬、猿、犬は必ず兄になり、牛、うさぎ、蛇、羊、鶏、いのししは必ず弟になります。各動物が5回繰り返されます。随分とややこしいですが、実際にそうなっているのです。

その5 – 60年周期の最初の年は木の兄の子、つまり「甲子(きのえね)」で始まり、兄と弟を交互に繰り返しながら前述した順序で数え、水の弟の猪、つまり「癸亥(みずのとい)」で終わります。 音読みは、それぞれ「こうし(または、かっし)」、「きがい」となります。飛鳥時代(6世紀末〜710)には、十干十二支の中国名を使って占いが行われました。この占いは江戸時代(1600〜1867)にはいろいろな地方に広がって、地域によっては、現在までも続いています。古い慣習はなかなか廃れないものです。

ここまでは、十干、五行、陰陽(兄弟)、十二支と、60年の周期について学んできました。次は、この古代の慣習のさらにおもしろい面について話しましょう。 人の性格は、その人の生まれた年の動物に似ると信じられています。たとえば、丙午(ひのえうま)に生まれた女性は頑固で夫を殺しかねないとか、牛年生まれは辛抱強い、ねずみ年は落ち着きがない、といった具合です。

十二支は、世界の多くの場所で、時刻と方位を示すのに用いられました。たとえば、ねずみは午後11時から午前1時(真夜中)を、馬は午前11時から午後1時(真昼)を表しました。 方位では、ねずみは北を表し、時計回りに順に進んで、馬は南を示しました。今ではこの方法を見かけることはありませんが、昔はこれが一般的でした。30度ごとに各動物の名前が順次充てられていました。今日では、十干十二支を考慮に入れて物事を決めるようなことはほとんどありません。しかし、自分が何年生まれかは、だれもが知っています。本当の年がわかってしまうので、他人に教えたがらない人もたくさんいます。

世界には、アメリカを始めとして、十干十二支がほとんど知られておらず理解されていない国もあります。しかし、これは日本の文化と歴史の一部であり、失ったり忘れてしまってはならないものです。私は、十干十二支については日本人ならだれでも知っていますが、その起源は忘れられているように思います。

このような時間の計り方がほかの国でも用いられていたことを考えると、日本のすばらしい習慣がすべて日本で生まれたわけではなく、外国から伝わったものもあることがわかります。そしてそれは、日本が鎖国の時代を除いて常に国際的な国であったことを物語っています。鎖国をしているときでさえ、外国の習慣や技術が伝わり、受け入れられたのです。 新しいものを受け入れるのは結構です。しかし、日本のすばらしい習慣や文化をどうか忘れないでください。