大国主について - Introduction of Okuninushi

伊耶那岐、伊耶那美、そして須佐之男亡き後の大国主命は、出雲の国の民にとって最も重要な神であったということができます。大国主の尊は天の下すべてのものを支配する偉大な神を意味する「出雲の国風土記」における「あめのしたしろしめししおおかみ」のくだりで知られています。古事記や日本紀の中では、短く大己貴(おおなむち)と紹介されています。大地主という意味です。

私たちは彼をさらに短く大国主と呼んでいますが、これこそ正しい呼び方なのです。そしてこれが、出雲の国における彼の名前なのです。出雲大社では大国主は大黒と呼ばれ、七福神の一人に数えられています。 強大な力を有しなおかつ聡明でもあった大国主は、脆弱な指導者層の元長い間にわたって力を伸ばしてきた対抗勢力を打倒すべく国を興します。これから紹介するいくつかの伝説はそのときに起こった出来事を伝えています。

出雲の国がいかに隆盛を誇ったかを物語る伝説は数多く存在します。最後の物語は出雲大社の建立、大和と出雲の国の間の和解について書かれたものです。こうした物語は読む者をとても興奮させ、読め進めていくうちに私がこれまで本連載の中で常々主張してきたことが事実であることを裏付ける内容に遭遇します。つまり、古代出雲の国は強大な力を誇る王国であった、ということです。

さらに、出雲の国が支配していたのかもしれない日本史上最大の論争の一つである神秘の国・邪馬台国の所在地についても論じていくつもりです。多くの人は邪馬台国の存在を信じていますが、一部、それについて否定的な見方をする人もいます。これについては「須佐之男の国」というエッセイの中で述べています。もう一つ別の可能性も残されており、それについてもできる限り言及し主張していくつもりです。