須佐之男とヤマタノオロチ - Susanoo and Yamata no Orochi

須佐之男とヤマタノオロチ

高天原を後にした須佐之男は、地上へと向かい斐伊川下流にたどり着きます。ここで箸が流れてくるのを目にした須佐之男は、上流に人が住んでいるのだなと思いました。もちろん須佐之男は正しかったのです。須佐之男が上流へと足を向けると二人の老人に出会いました。お爺さんの名は足名椎(あしなづち)、お婆さんの名は手名椎(てなづち)といいました。

二人の間には「奇稲田姫(くしなだひめ)」という名のうら若き美しい娘が立っており彼らは皆泣いておりました。 かような悲しい光景に須佐之男は動揺しなぜそのように悲しんでいるのか、と尋ねました。すると老人は「毎年大蛇がやってきては八人の娘を食べてしまいます、そして奇稲田が最後に残った娘なのです」と言うではありませんか。その大蛇は名を「ヤマタノオロチ」といい、八つの谷と山を覆い尽くしてしまうほどの大きさであるいうことでした。

須佐之男は彼らを助けることを決意しますが、奇稲田がたいへん美しい娘であるというのがその理由でした。須佐之男は老夫婦に、もしも大蛇を征伐することができた暁には娘を嫁にくれるか、と尋ねます。もちろん老夫婦も、娘をだれにでもくれてやる、というわけにはいきません。二人が男の正体を尋ねると、彼は自らが太陽の神・天照の弟であることを告げます。これを聞いた老夫婦が須佐之男の条件を呑むや否や、彼は瞬く間に奇稲田をくしに変え髪の毛の中に入れてしまいました。くしは大切なものなのです。

須佐之男は老夫婦に、八つの桶に入った強い酒を準備するよう言います。二人は言われた通りに酒を用意しそれを八つの開いた門の入り口の前に置きました。用意ができたとき、大蛇が近づいてくるのが目に入り須佐之男も決闘の態勢を整えました。 垣根にたどり着いたヤマタノオロチは、すべての酒を飲み干し眠りに落ちます。そこで須佐之男はオロチに襲いかかり八つの頭と尾を切り落としました。壮絶な戦いではありましたが、須佐之男は勝利を収めます。

戦いに勝った須佐之男は、オロチの八つの首を「八本杉」に埋めます。この場所は現在の木次町近辺に当たります。須佐之男はそれぞれの頭の上から杉を植えました。そして、それらが洪水や病によって駄目になった場合にはほかの杉が植樹されたのです。最後に杉が植えられたのは1873年のことです。須佐之男は、オロチの尾の一つの中から美しい剣をみつけ「叢雲(むらくも)」と名づけました。 そして、須佐之男は、その剣を泰平の象徴として、また姉を敬う気持ちの印として天照に捧げます。

天照はそれを丁重に拝受し、叢雲は遂に三種の神器の一角を形成するに至るのです。 残りの二つは天照が神々から受け取った鏡と天照が父親の伊耶那岐から授かった勾玉の首飾りです。剣はその名を叢雲から「草薙(くさなぎ)」へと変えますが、そのことは別の物語に登場します。

ヤマタノオロチの正体は、洪水を引き起こし人々に災難をもたらした多くの川であったと思われます。須佐之男は技師として土手道と盛土で洪水の調整にあたったのです。 有名な日本刀や刃物、および農機具を作るための砂鉄は、ヤマタノオロチの血からできたであろう赤い川から生まれたのです。偉大な発見です。川の水が赤いのは砂鉄のせいなのです。現在でも地元の製鉄会社に利用されています。

ヤマタノオロチを退治した後、須佐之男と奇稲田は稲田の祭られている八重垣で暮らし始めます。その後須佐之男は島根県にある大東に移ります。さらに後、夜食国(よるのおすくに)の支配者となります。この国の門は現在の東出雲にあります。