人類とアイヌ民族 - Man and the Ainu

人類とアイヌ民族

人類が初めて登場したのは180万年前と言われています。これはとてつもなく長い時間のようですが、決してそうではありません。人類が持つ歴史はきわめて短いものであり、我々「ホモサピエンス(知的生物としての人間)」に限っては、誕生してからわずか10万年しか経っていないのです。少なくともそれが学者間の定説です。

私たちは国の起源から、日本で何が起きたのかを理解し、日本の歴史とそれによって私たちの生活様式、文化、および社会が受けている影響について考えてみる必要があるのではないでしょうか。 ここでは、多くのデータを基に日本民族の歴史と変遷に対して私なりに考察していくことにします。

25万年前から紀元前4万年前まで生息したネアンデルタール人は、信仰ということを覚えた初めての人類でした。しかし、彼らが崇拝していたのは人間ではなく、その強さと狂暴な性格からだと思われますが、なんと熊だったのです! アイヌ民族は厳密に言えば日本の原住民ではなかったかもしれません。しかし、現在私たちの知る限り最初に日本に住みついた部族です。彼らもネアンデルタール人と同様に熊を崇拝していたと思われ、その名残は現在も見ることができます。

アイヌ民族はこの世に勝るものはないと考え、天国で暮らす神々もこちらに来たがっていると信じていました。彼らは、神がこの世に降りてくる際は動物の皮を、それも多くは熊の毛皮をかぶり、時には草花やほかの生き物にも姿を変えるといいます。アイヌの宗教の教義では、神々はこの世で終わりを迎えない限り神の国には帰れないとされ、神がその国に帰るための手助けをすることは善行と解釈されます。死を信じず、生まれ変わると信じているため、植物を採取したり動物を殺すことは攻撃ではないのです。

それを象徴する彼ら独特の儀式の一つに、小熊を捕らえて家庭に預け、家族の一員として育てるというものがあります。小熊が狂暴になって人間の子供と遊べなくなってくると、檻に入れて大切に飼育します。そして、小熊が4歳になると、儀式にのっとり、安楽に殺して食料にします。儀式の間、神に対して、もしこの世での滞在が楽しいものであったなら再び訪れるよう呼びかけます。 また、アイヌ人の葬儀では、死者に対して幽霊や霊魂としてでなく、再び人間の赤ん坊としてこの世に戻ってくるように言うのが習わしとなっています。

ネアンデルタール人が信仰した宗教では、熊の頭蓋骨は山の頂上にある洞穴の中に安置しなくてはならないとされました。さらに、彼らが生活していたと思われる場所からは、火を使用した跡が発見されています。アイヌ人も熊は山の神、火の神であると考えました。 このように見てくると、ネアンデルタール人とアイヌ民族の間には習慣、考え方において非常に似通ったところがあることがわかります。

この地で初めて生活し始めたのは、約25万年前に始まった氷河期時代の寒さから逃れるために渡ってきたネアンデルタール人だったのかもしれません。舟を持たない彼らは、当時ユーラシア大陸と陸続きだったと推測されるサハリンを伝ってやって来たものと思われます。

最近の調査では、当時は日本列島もユーラシア大陸の一部であった可能性が指摘されています。海水が凍り巨大な氷山となったため、この時代の海水面は現在より150メートルも低かったのです。歴史とは本当におもしろいものです。