鏡 - Mirror

鏡

鏡は、天皇の権威の象徴である「三種の神器」の筆頭に挙げられます。二番目は「勾玉(まがたま)の首飾り」、最後は「剣」です。中でも鏡は、真実を意味することから最も重要なものとされ、また天照大神の象徴です。天照大神は大和の国を治めるためにニニギノミコトを遣わすことを決意し、その際、助けが必要なときはこの中から自分を呼び出すようにと鏡を手渡しました。

このことからもわかるように、人間の魂と鏡には深いつながりがあるのです。そのため、鏡は常に曇り一つない状態に保たれ、丁重に取り扱われなくてはなりません。通常、神社には神主だけが入ることを許される場所があり、たいてい鏡が御神体として祭られています。神道における崇拝の対象は太陽であり、太陽の神様、天照大神は自分の分身とも言える鏡を非常に大切にしていたことから考えると、神社において、鏡が崇拝の対象となるのはごく自然なことです。

昔の日本では、鏡を床に置くのは良くないこととされ、それをまたぐのは決してしてはならないことでした。西洋にはこれに似た、鏡を割ると7年間不幸が付きまとうという迷信が存在します。宗教的な意味合いにおいて重要であるということとは別に、というよりはだからこそ、鏡には美しい装飾が施されました。特に銀や銅の鏡が使用された時代のことですが、そうした鏡は頻繁に曇るため、職人が家々を回って常に光らせておかなくてはなりませんでした。

現在でも貴族を先祖に持つ日本の家庭では、「御霊代(みたましろ)」と呼ばれる小さな鏡を代々受け継ぎ、宗教的な儀式の際には用いています。古代に中国から輸入された鏡は、当時最も貴重なものの一つでした。記録によると、邪馬台国の女王卑弥呼(170?〜240)は多くの鏡を中国の皇帝から贈られたということですが、最近島根県内で出土した鏡はなんとその中の一枚である可能性があるのです。