根付け - Netsuke

根付け

先日、留学生のために友人の家で開かれたパーティーの席で、ある人から根付けについて尋ねられました。600年以上もの歴史を持つこの美術品に、常日ごろから強い関心を持っていた私は、根付けの歴史についてのささやかな知識を披露し始めました。

もともと根付けは、鍵(かぎ)を持ち運びやすくするために考案されたものでした。ご存知のように着物にはポケットがなく、当時の鍵はたいへん大きくて重たいものでした。そこでひもに結んでそれを帯からつるしておくと考えたのは良かったのですが、ひもが帯からずり落ちてしまいます。そこで、小さな木片をひもの端に付けて落ちるのを防ぎました。この木片が根付けの始まりなのです。 最初は竹の根が使用されたのかもしれません。というのは、竹はおもしろい形をしているからです。その後、美しい彫りが施され、また、ほかの木や、象牙(ぞうげ)、骨、サンゴ、漆なども用いられるようになりました。世界的に名高い日本の彫り物は、さらに精巧さと美しさを増していきます。

私は、根付けの彫りものが頂点を極めたのは、明治時代の中期ではなかったかと思います。明治時代の後期になると、彫りものは以前よりはるかに優美で繊細なものになります。しかし、私はこの時代の根付けをあまり好きになれません。あまりに精巧になりすぎて、本来の目的から懸け離れたものになってしまったからです。良い根付けとは、角やとがったところがないものです。帯の下にすっぽりと収まり、手にぴったりなじみ、温かみと安らぎを感じさせるもののはずです。私は美しいものが大好きです。もし根付けをお持ちでしたら、ぜひ見せていただけませんか。今では根付けは大変貴重で珍しく、コレクターに珍重されているのです。