和紙 - Washi

和紙

手すき和紙の歴史はたいへん古く、正倉院には、ページごとに異なる和紙でできた1200年前の書物が収蔵されています。八雲村の和紙職人、安部栄四郎さんは長年にわたり和紙の研究を重ね、ついにその紙すきの技術が認められて人間国宝に選ばれました。皆さんも一度和紙に触れたら、その美しさを忘れないと思います。「三椏(みつまた)」はかつて紙幣に用いられました。「雁皮(がんぴ)」という紙はたいへん薄く上品で、書画を描くのに適してます。「楮(こうぞ)」の繊維は、数ある和紙の中で最も長く丈夫なことから、公文書やそのほか重要な書類、芸術作品に用います。

丈夫で虫食いを防ぎ、用途が広いのが和紙の特徴です。紙を染めることもありますが、それは通常、和紙を乾燥させた後に行います。和紙の模様は、染める前に織物の技術を駆使して作られます。しわの端だけを染め上げると、美しくほのぼのとした模様が現れます。完成した和紙は額に入れたり、テーブルセンターとしてよく飾られます。

和紙はまた、ついたてや障子にも用いられます。さらに、第二次世界大戦中に日本軍がアメリカに向けて飛ばした風船爆弾の材料としても用いられ、米国本土にたどり着いたものは多くの山火事を引き起こしました。その昔、和紙を何枚も重ねて作ったキセル入れ、箱、そのほかの装飾品がありました。それらは漆で上塗りしてあり、何世紀もの間長持ちしたということです。そのほか、衣服を作るのに使用された和紙もあり、こうした和紙を使って作られた着物も存在しました。

冒頭で紹介した人間国宝、安部栄四郎さんは、なんと”和紙のスーツ”なる物を作ってしまったのです。和紙は自然から人間への贈り物です。日本におけるほかの三つの貴重な植物「茶、漆、桑」同様に、和紙は人々の生活に美と平穏とぬくもりを与えます。もちろんまったくの無害で、廃棄物もありません。

私たちが日常使用しているものがすべて、これらの木のように人間に優しいものであればどんなにすばらしいでしょう。いずれの木も日本人の心と、自然に対する限りない愛情を物語っています。しかし、自然の美しさをそのまま取り込んでいるという点において、やはり和紙に勝るものはないと思います。