松竹梅-松 - Sho-chiku-bai - Pine

松竹梅-松

日本の人々は昔から自然に親しんできました。特に、椿、杉、樫、柿、桜、梅といった風景に趣を添える木を好みます。木を許可なく伐採することは法律でも禁止されています。松は日本の国、風景、文化、人々の生活などと深く結び付いています。日本人と松の木は切っても切り離せない関係にあるのです。至る所で見られるこのりっぱな植物は、他のどんな木より画家たちを引き付けてきました。手法は異なっても、どの絵からも松の持つ美しさや強さが伝わってきます。松は水墨画でもよく目にします。 松は松竹梅の筆頭に挙げられている植物です。松竹梅は鶴亀と共に描かれて、幸福と長寿を象徴するものです。

日本では、松は最も高貴な植物とされ、物語にも多く登場します。日本中の寺や神社で、たいへんよく手入れされた松を見ることができます。 松は、力強さ、頑強さ、安泰を象徴する植物です。四方八方に伸びた枝は、私たちを守ってくれているかのようです。松葉は、強い絆で結ばれた平和な家族を表しています。 家や旅館などで最高級の部屋は「松の間」であり、封建時代の最高の地位は「松の位」でした。「松の言の葉」とは、平和と幸福、そして強さを象徴する詩を意味します。松の根も幸運を呼ぶとされています。

最もよく見られる松は、黒松と赤松です。黒松の葉は長く太いため男の松とされ、赤松は、その細く短い葉から女の松とされています。海の近くに茂る黒松は曲がりくねっていますが、山中で見られる松の多くは、黒松よりまっすぐな形をしています。 日本の人々はこの植物に対して、ある種独特の感情を持っています。しかし、そのことは海外ではあまり知られていません。あたりを見回せば、到る所で松の木を目にすることができます。 近年、枯れた松の木を多く見かけます。実は、これは農業における人間の行いが招いた結果です。マツキボシゾウムシ、マツノキクイムシ、マツノマダラカミキリなどの甲虫は松を駄目にするのです。以前は、松の木を駄目にする甲虫の天敵、蛙が多く生息していたため松は無事でした。しかし、農業で殺虫剤を利用したことにより、蛙の数も激減し、マツノキクイムシなどが繁殖して松を食いつぶしてしまったのです。松の代わりに杉を植えましたが、杉の花粉のために多くの人が花粉症に苦しんでいます。

人間の想像力の欠如が自然の美しさを台無しにし、貴重な生物の生存を危うくしているのです。将来のことを考えると暗澹たる思いがします。 私たちはそろそろ、利便性のみを追求する生活から脱し、たとえわずかでも自然と向き合い、その声に耳を傾ける時間を持つべきです。最初は難しいかもしれませんが、やがて心からくつろげるようになるはずです。

寺院や神社はそのために最適の場所だと思います。 出雲大社にはたくさんの古い松があります。これらの黒松や赤松を見ても、今の習慣を続けていれば、先人たちのように自然を感じることはとうてい無理でしょう。テレビの前に座っているだけでは、自然が人間に与えてくれる喜びに気付くことなど望むべくもありません。

鳥取県の皆生には海岸沿いに広がる黒松の公園があります。りっぱに育った松を見ていると、人々の努力の跡がしのばれます。幾多の困難を乗り越えて、人間にとって松は友人になったのです。そこでは、松の美しさをだれでも、ただで観賞できます。仏様から私たちへの贈り物、それが松です。