桃 - Peaches

桃

古事記と日本の神話の中で、桃はほかのどんな果物よりも重要な位置を占めています。一つ例を挙げましょう。伊耶那岐が黄泉(よみ)の国へ亡くなった妻・伊耶那美を連れ戻しに黄泉(よみ)の国へ行ったとき、妻の居場所を突き止めるべく左側のまげにさしていたくしを用いて明りを点けたのですが、目にしたものは腐敗した妻の死体でした。恐れおののいたたイザナギはたまらず逃げ出します。

そのような惨めな姿を見られ辱しめを受けた伊耶那美は「黄泉の国の醜い女」(ヨモツシコメ)に伊耶那岐の後を追わせます。 懸命に逃げながら、伊耶那岐は髪の毛からブドウのつるを取り出しそれ投げました。するとたちまちブドウの実が生り、鬼婆たちはそれを食べようと止まってしまいました。さらに伊耶那岐は、右のまげに挿した竹のくしを割って投げ捨てたところ、たちどころにタケノコが芽を出し、再び鬼婆たちはそれを食べるために立ち止まってしまいました。

へまをやらかす鬼婆たちに業を煮やした伊耶那実は、八人の雷神と千五百人の黄泉の国の兵を遣わし伊耶那岐追わせます。1本の桃の木にたどり着いた伊耶那岐は、三個の桃の実を追っ手たちに投げつけ、一人残らず退治してしまいました。 伊耶那岐は桃に感謝し彼らに対して、伊耶那岐を救ったのと同じように彼の国の人々を常に邪悪なものから救わなくてはならないと言います。

そして、伊耶那岐は桃に「偉大で神聖な果実」の名を与えます。以来、桃は日本人にとり特別な果物となのです。そして、桃太郎のお話が生まれます。老夫婦の元に桃から生まれ出た桃太郎は、昔話の英雄です。 老夫婦の愛情に育まれ立派で逞しい若者へと成長した桃太郎は、島に暮らす人々をたいへん苦しめていた鬼を退治すべく、鬼が島へ向かいます。桃太郎は犬、猿、キジの助けを借りて鬼どもをやっつけます。

この物語はだれでも知っていますが、このエッセイの冒頭部分から、みかんやりんごではなく桃がこの物語に登場する訳を理解することができます。地方にある物語や習慣は今でも桃の持つ意味を思い起こさせます。古い物語は私たちに多くのことを教えてくれます。皆さんはお読みになったことがありますか。私はまだ読んだことがありませんが、ただいま一生懸命奮闘しています。