出雲の神話・注解 - Commentary

最近この欄で紹介したいくつかの伝説は、出雲国風土記や古事記、および日本紀に収められているものです。私はこれらの物語を、皆さん、とりわけ学生や外国の若者が理解できるよう平易な英語で書いてきました。日本神話は、すべての人の記憶に残り、そしてだれにとっても楽しめるものでなくてはならないのです。

伊耶那美が埋葬された場所と伊耶那岐が逃げてきた場所への入り口・夜食国の平坂(よもつくにのひらさか)は東出雲町にあります。これは、黄泉の国への坂という意味です。中には、夕暮れの暗闇を意味する、または古代の日本語で「いふや」という、と書いてある本もあります(東出雲町では毎年、いふや祭りというお祭りが開催されます)。しばらくの間、こうした物語に思いを馳せてみられてはいかがですか。

それらの起源は、たいへん力強く神聖な神話を持つどこかの土地にあるに相違ないのです。 自国の誕生にまつわる物語というのは、世界中ほとんどすべての国がを持つものですが、そうした物語はしばしば宗教と結びついています。そして、宗教が変化するたびに、特定の史実に新たな意味や重要性が与えられ物語もまた変化するのです。このことは、聖書や仏教の経典においても例外ではありません。神道もまた、為政者の欲する状況に合うように変化してきました。一国の歴史というものは、戦における勝者や真実を知られることを忌み嫌う人々によって書かれたものであるということを私たちは常に考慮しなくてはなりません。これはどこにでも起きることであり、学ぶことでその証拠をつかむことができるのです。

これまでに紹介した4編の物語のほかに「桃」という物語もあります。この中で伊耶那岐は、黄泉の国から逃げてくる際自分を助けてくれた桃に「聖なる果実」の称号を与えます。伊耶那岐は桃に、自分を救ったときと同じように出雲の国の人々を救わねばならないと言った、と古代の記録にあります。 神話や伝説についての調査を行う際には、心を開く必要があります。そして、対象となる国と関係を持つ国々の本を数多く読み、一見無関係と思えるような調査でも行うのです。

後々、伝説や神話の持つ多様性の理解に光明をもたらす驚くべき関連を発見がなされるはずです。 数多くの物語が互いに驚くほど似通った部分を持っています。そして、それらを一致させる作業は研究者たちの手にかかっているのです。