大国主と須佐之男 - Okuninushi and Susanoo

因幡の白ウサギとの冒険の後、彼に嫉妬した大国主の兄弟たちは、復讐を企て彼を殺そうとします。大国主は以前にも、兄弟たちに殺害されたことがありました。彼らは大国主に山から駆け下りてくるイノシシを捕まえるよう命じました。そして、イノシシに似た大きな岩を熱しそれが真っ赤に焼けたところで山の上から大国主のいる方向に向けて転がしたのです。言われるままその岩を抱きかかえた大国主はやけどを負い命を落としてしまいました。

大国主の母は神々に息子を生き返らせてくれるよう祈り、果たしてその願いは叶えられました(これと同じ物語がスウェーデンにあります)またあるとき、邪悪な兄弟たちは1本の木を中央で真っ二つに裂き、その間に大国主の体を挟み木を元に戻しました。言わずもがな大国主は押しつぶされ亡くなってしまいました。母は今1度神々に救いを求めました。すると大国主は再び蘇りました。

大国主が須勢理に出会ったのは、彼が木の裂け目をすり抜け兄弟たちから逃げてきたときです(木の裂け目は伝説によく登場し、シャーマニズムにおける幸運の象徴とされています)大国主はひとめ会った瞬間、須勢理姫に恋をしてしまいました。彼は姫の家を訪れ、姫の父親でありヤマタノオロチを退治した神である須佐之男に出会います。娘を手放したくなかった須佐之男は、最初の夜は無数の蛇のいる部屋で、そして2日目の夜はムカデとサソリのいる部屋で、と2度にわたり大国主の殺害を試みますが、姫が渡した襟巻きによって大国主は難を逃れます(スカンジナビアにもこれと同じ物語が存在します)

続いて須佐之男は、草原の中でをなくしたという鳴鏑(なりかぶら)を取ってくるよう大国主に命じました。そして、大国主が探しに入っていったところで草原に火をつけたのです。しかし、大国主はねずみたちの土の中の住みかにかくまわれ無事でした。火が収まると大国主はねずみたちに手渡された鳴鏑を手に須佐之男の元へと戻っていきました。

須佐之男は荒れ狂う火の中生きて帰った大国主を見てたいそう驚きましたが、彼と共に家に引き上げていきました。家に戻った大国主は、須佐之男を彼の髪の毛の中に虫をつぶして眠らせ、髪を梁に縛り付けた挙句、須佐之男の生弓矢(いくゆみや)と天沼琴(あめのぬごと)、そして姫と共に姿を暗またのです(古代においては、異なる部族同士の結婚を避ける目的から略奪的な結婚がなされることが多く、男は子孫繁栄のため別の集団から花嫁をさらってこなくてはなりませんでした 同様の習慣はアメリカインディアンの一部にも存在しました)

須勢理と共にうまく逃げた大国主に対し須佐之男は、盗んだ武器を使って邪悪な兄弟たちを追い払い、出雲地方に腰を落ち着けるように言い、大国主はこれに従いました。 須勢理の後に八上姫が大国主の妻となりましたが、侮辱され怒った姫は自分の子供を美保関の木の裂け目に残したまま因幡の国に帰ってしまいました。その子供とは七福神の一人として知られる恵比寿だったのかもしれません。

その後も大国主は結婚を繰り返し、農耕の技術や薬学を始めとするさまざまな分野における博識と多くの才能によって名をはせました。大国主は出雲大社やそのほか数多くの神社において出雲の国の祖として崇められています。 久白町という名前の町が島根県にあります。その昔は鯨町と書きましたが、現在町は沿岸に位置していないため、異なる漢字が用いられるようになったのです。 このことから、すべてを歴史の流れに合わせようという権力者たちの手のうちが見えてきます。私にはこの鯨という名前、町が海岸に面していない今となっては古代の地形を物語る真の証人であるように思えるのです。