サメ(その3) - SHARK III

今サメ(その3)回紹介する伝説は、たいへん興味をそそるお話です。というのは、だれでもこの物語の舞台となった場所を訪れることができるからです。 昔々、一匹のサメが、阿井に住む美しい玉姫に恋をしました。サメは、姫に少しでも近づきたいと斐伊川を上っていきましたが、サメが近づいてくるなど考えただけでも嫌な姫は、大きな岩で川をふさいでしまいました。そのため、サメは岩から先へ行くことができなくなってしまいました。

その後、サメは山のふもとの岩でふさがれた川の中で、姫を恋慕いながら過ごしたということです。 それ以来、その場所は「巒山(したいやま)」と呼ばれるようになりました。しかし、いつしか「慕う」という意味が失われて、現在では「鬼の舌震い」という名で呼ばれています。この名前は、最初の名前ほどロマンチックではありませんが、確かにこの場所はときおり荒れることがあります。 サメが登場する物語は数多くあります。

出雲の人々はサメに悩まされたに違いありません。今でも、出雲地方の沖合の日本海にはサメが出没します。中には生命を奪われた人もいたことと思います。人々はそれを加賀に住む女神の仕業だと考えました。すべての神が善良とは限らないのです。今も加賀の漁民たちは、女神の宿る岬を通るとき、女神の呪いを追い払い、船の客を守るために、大声を上げたり船べりをたたいたりするということです。民話に耳を傾けてみてください。おもしろいですよ。