とさかの歴史 - The History of The Comb

とさかの歴史

にわとりの頭のてっぺんの赤い部分を“comb とさか”といいますが、今回お話するのは“comb くし”についてです。その昔、この言葉には異なる意味があったのかもしれません。現在ではくしは髪のある人がそれを整えるために使用します。私はそのような面倒とは無縁ですが。日本には、その昔女性たちの輝く黒髪を優雅に飾り立てたたいへん美しいくしが数多く存在します。

漆塗りの美しい模様が施された木製のもの、彫りを施してあるもの、そして質素な木製のくしもあります。もちろんこれはただの木ではなく、くしに適した白檀を始めとするきわめて貴重な素材なのです。私もいくつかくしを収集してきました。その中のいくつかは象牙でできています。壊れているものもありますが、今でもとても美しく、技巧と仕上げの優れた技を目にすることができます。

最も初期のくしは今日のものとはまったく異なっていました。当初くしは宗教的象徴として用いられ後に女性たちが既婚者であることを示すために用いるようになりました。年配の方たちは今でもくしを大切にしておられます。 くしを無くしたら二度と出てこないでしょう。そして、くしを捨てると必ず不幸が起きます。このことから、くしは贈り物としては拒否されます。くしを決して軽々しく扱ってはなりません。くしをどこかに放っておくことは、くしの持ち主に災いをもたらす機会を悪い霊に与えてしまうことを意味するのです。

数多く存在する習慣や迷信は、人間を救ってくれるくしのありがたみを私たちに教えてくれます。くしはわれわれの命を救うことさえあるのです。 現在の形のくしは中国から伝わりました。しかし、それが有用なものとして使われるようになったのは、徳川時代の初期、今から400年前のことです。 本来の用途のみならず、くしは数多くの日本の伝説に登場します。

私は、古事記と日本紀の最初の物語の一つ、伊耶那岐と伊耶那美の話の中にくしが出てくるのを発見しました。これが竹、つまりくしを大切なものと見なすためのものであるのかどうかについては定かではありません。しかし、次回からこうした物語を紹介していくつもりです。 私は古代の伝説や神話を心から愛しています。これまでにもたくさん紹介してきましたが、願わくばもっとたくさん紹介したいと思っています。皆さんにそれらについて知り記憶にとどめていただきたいのです。こうした物語は、皆さんのかけがえのない遺産なのです。