出雲の国 - The Izumo no Kuni

出雲の国

私は日本が大好きです。もちろん、今も日本にいて、本州の北西部に位置する松江という小さな街に住んでいます。

日本は私がこれまで訪れたどこよりも美しい国で、そのために私はこの国に三十年以上も住み続けています。(ところで、私は人生の半分以上を故郷以外の土地で過ごしてきました。インド、アフリカ、ミャンマー、ネパール、フィリピン、韓国、日本、またアメリカ国内の各州など。その大半を、日本で暮らしています。そう言えることを私は幸せに思います。)

魅力的なこの地方に関して特筆すべきことは、この地方が他に類を見ない偉大な文化的中心地であったことです。

考古学上の歴史は縄文時代(紀元前12000年〜紀元前300年)までさかのぼり、日本最古の書物である「古事記(712年)」と「日本書紀(720年)」のいずれの冒頭部分にも、出雲に関する記述が出てきます。そして、日本で三番目に古い書物「出雲国風土記(733年)」は全編出雲王朝について書かれた本です。

ここ出雲は、イザナミとイザナギの二人の神が広大な田んぼを耕すため地上に降臨した、という日本最初の神話の舞台です。 その次にやって来たのは、アマテラスの弟のスサノオでした。出雲大社は、大地の神オオクニヌシノミコト(ダイコク)が自分の土地を日の女神アマテラスに譲ったとき、彼を慰めるため建てられたとされています。

神話に登場する最初の女神イザナミ、スサノオと彼の妻イナダ、そしてダイコクのそれぞれを祭った日本最古の三つの神社は、いずれもこの地方にあります。壮大な歴史を持ち、しかもこのように美しい所に、関心を持たない人などいないはずです。日本の歴史と文化に興味ある人ならなおさらでしょう。この地方に存在する古墳は、法令により開けることは禁じられています。恐らく、歴史を変えてしまう発見を避けようとしてのことでしょう。

私は出雲こそ日本の誕生の地であると確信しています。文化、民族、宗教などのあらゆる観点から、この地の真の生い立ちを探っていくべきです。 仏教に関する最古の遺物がこの地で発見されました。

出雲大社が大社造りの建造物としては最古のものと思われていますが、実はそうではありません。この地方には出雲大社より古い神社が少なくとも三カ所存在します。 日本で最も古い神魂神社は1600年以上前、日本で最も重要な神社の一つである熊野大社は1300年前、八重垣神社は1300年前にそれぞれ建造されました。スサノオが妻のクシイナダを避難させたと言われる八重垣神社には、二人を描いた日本最古の(1300年前)壁画が現存します。なんとも驚くべきことです。不思議な思いに包まれます。皆さんはどうですか。

日本の真の歴史と文化を学ぼうとする人々を引き付けるものは、これだけにとどまりません。この地方には至る所に神社や寺があります。大山寺、清水寺、鰐渕寺は、この国で最も古い寺です。いずれも538年、日本に仏教が伝来して間もない頃に建造されました。当時、日本には多くの中国人や朝鮮人が移民として、あるいは戦いから逃れるためやって来ました。彼らがもたらした宗教や文化を基に、これらの寺は建造されたと思われます。

古代の出雲は、日本で最初の、そして最も進んだ石器文化を誇っていました。さらには、世界で最も長い焼き物の歴史がここにはあります。 この地方は多くの遺物を内包し、他の地域で成熟していった文化の多くも、ここにその起源を持っています。

奈良、京都、東京へと政治的中心が移っていくに従い、出雲は人々の心から次第に忘れられていきました。しかし、古代に二人の天皇を生んだこの地からは、元総理の竹下氏をはじめ多くの有能な政治家、著名な作家、芸術家、詩人や、歌舞伎の祖である出雲阿国のようなユニークな人物が輩出しています。 この地を私は心から愛してやみません。