名前の大切さ - What's in a Name?

須佐之男が天照に別れを告げに行くという高天原での物語の中で、二人が子供を設ける場面がありました。天照は須佐之男の剣から三人の女の子を、須佐之男は天照の八坂の首飾りから五人の男の子をそれぞれ産みます。この五人の子供たちはしばしば八王子と呼ばれます。八坂はおそらく「八本の足」を意味するものと思われますが、中には「八つの坂」という解釈もあります。シャーマニズムにおいて8という数字はたいへん強い影響力を持っているのです。

八坂という言葉をさかのぼると、古事記や日本紀における日本の起源に行き着きます。 出雲の国風土記は出雲の臣広島(いずものおみひろしま)によって記されました。出雲の国の「出雲」は臣の名に由来するものと思われていますが、出雲の臣広島がその名を出雲の国から取った、という方がより信憑性があります。「出雲」は独自にあった古い名前ではないものの、臣の生まれる以前から存在していたのです。

私たちの土地には、日本最古の大社造の神社の一つであり、伝説でたいへんよく知らている八重垣神社があります。八重垣とは、「八つの雲の垣根」という意味です。 出雲大社に祭られている神・大黒様はたくさんの名前を持っています。大半の人は大黒様がインドの死の黒い神・マハカラだったという説が存在することを知りません。マハカラが日本に伝わったとき、彼は善良な神へと変化を遂げました。弁天様は、インドでは親睦の神様でしたが、日本に来ると音楽と美の神様になります。弁天様はまた、たいへん嫉妬深いともいわれています。

ラフカディオ・ハーンは妻の姓と日本の中の彼のおきにいりだった場所・八雲から取って名前を小泉八雲に改名します。名前を変えたことは、彼の西洋人作家としての名を知らしめることになりました。 日本では多くの男性が、妻の実家の養子となり名字を変えます。ですが、彼らの心はどうでしょう。人間の心は名前を変えるほど簡単に変わるものではないように私には感じられます。名前が大切であるというのはその通りですが、自らの個性と評価に対してなすのと同様に名前もまた尊重しなければ意味のないものになってしまいます。