松江城とその周辺 - The Matsue Castle Grounds

松江城とその周辺

私には、松江城がいつ振り返っても自分と向かい合っている様な気がします。

明治時代となって間も無い一八六八年、日本中にあった殆どの城は取り壊されてしまいましたが、松江城は先見の明を持ったある富農の尽力により難を逃れ、松江に取り極めて貴重な文化的財産となりました。

周辺の他の建物は全て取り壊され、もう見ることは出来ません。松江城は、その美しい姿で観光客を魅了すると同時に、日本でも取り分け重要な地域である山陰の歴史を今に伝える古代の美術の宝庫です。建築様式は初期の桃山様式を採用しており、国の重要文化財に指定されています。

亀田山の上にそびえ立つ合戦用のこの城は、その色調、形状、外観から威容を漂わせています。高さ三十?は、姫路にある、美しい眺めを誇る後期桃山様式の白鷺城に次ぐものです。 城内には、美しい甲冑や日本刀などが展示されています。

この時代の武士達は勇猛でしたが、同時に、美を愛でるという事も知っていたのです。最上階(六階)からは、美しい松江の街並みを一望することが出来ます。この場所を愛した吉晴の息子の思いが伝わって来る様です。

城の側には、一九〇三年頃建てられた洋風建築の郷土館があります。元々、天皇陛下がお泊りになるための場所として建てられましたが、現在は明治時代の工芸品を展示する博物館となっています。 この様な洋風建築の前に立つと、西洋文化を吸収しそれに適応しようとした当時の日本人の熱意が迫って来る様です。

城の敷地は現在、公園となっており、人々は桜、ツツジ、椿を始めとする四季の花を楽しんでいます。松江城と郷土館はいわば日本の中世史を伝える生き証人です。先達が私達に残して下さった作品に感動を覚えずにはいられません!。