日本とその神話 - Japan and Mythology

ここ山陰は、古代神話誕生の地です。伊耶那岐(いざなぎ)と伊耶那美(いざなみ)はこの地にたどり着き、そして彼らが大地を創造するために用いた槍は、アメリカや中東、および中国といった国々に存在する似た内容の神話の中にも登場したに違いありません。

こうした物語はどのようにして日本にやってきたのでしょうか。おそらく、人々が忘れ得ないような出来事が神話となり、移民たちの手によりこの国に伝えられたのだと思います。 縄文時代以前の出来事はほとんど記録に残っていません。よって、私たちにできるのは、アイヌより先に日本に渡ってきた人々が残したであろうと思われるわずかな手がかりを基にそれがどのようなものであったかを想像することだけです。

こうした人たちの中でも、最後にやってきたのは「土蜘蛛族」だったのではないかと私は考えています。古事記や日本紀の中の伝説は彼らは遠い過去に壊滅させられたことを伝えています。もちろん現在でもアイヌは存在しますが、彼らは北海道だけに居住しています。

歴史にはとても魅了されますが、きちんとした研究を行ううえで必要となる資料を十分得られないのが実状です。世界中の文献に当たるようにしていますが、一つの事象をめぐってもいくつもの説が存在するため、一般には支持されにくいような結論に到達せざるを得ません。自らの見解に、他者が同意してくれるか否かについて、私はあまり気にしません。自分が正しいと思えばそう言い、ほかの人たちのことは気にならないのです。事実や常識は正しくあらねばなりません。そうすれば論争の余地はそれほどないはずなのです。 わが国最古の書物や諸外国の古い文献を基に、この国で起きた記録には残っていない出来事の真相を突き止めることができるのです。

古い物語は、ほかの物語が見落としてしまうよう数多くのことを私たちに教えてくれます。しかしながら、そうした物語の中には、南洋のそれと似たものが存在しますし、そのほかにも中国や朝鮮半島から伝わってきたものも存在します。さらに、北欧や中東にその起源を持つ物語もあります。こうした発想は、日本の始まりを語るうえでたいへん示唆に富んでいると思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょう。これからもこうした分野における研究を続けていこうと思います。